内閣府健康・医療戦略推進事務局が主催する「第8回 日本医療研究開発大賞 受賞者と語ろう!~研究成果を社会実装へつなぐ挑戦と実践知~」が、2026年3月31日に開催されました。本イベントでは、複数の受賞者・企業によるプレゼンテーションが行われ、株式会社CROSS SYNC取締役会長の髙木俊介氏も自社サービスについて発表、第8回受賞者らによるパネルディスカッションにも登壇しました。この記事では、当日の様子をレポートします。

日本医療研究開発大賞は、内閣総理大臣賞や健康・医療戦略担当大臣賞が設けられているなど、国としての評価と権威を備えた格式高い賞です。本イベントは、日本医療研究開発大賞審査委員長を務める自治医科大学学長・永井良三氏をはじめ、内閣府健康・医療戦略推進事務局次長・江澤正名氏が参加されており、その注目度の高さがうかがえます。
日本医療研究開発大賞の受賞事例を通じて、研究成果が企業への導出や社会実装へと進展するプロセスを学び、再現可能な知見や政策的示唆を得ることを目的として、本イベントは開催されました。第8回 受賞者による講演やパネルディスカッションを通じて、主に以下の観点から、医療イノベーションの社会実装を加速するための実践的な知見が示されました。
・研究者・企業の試行錯誤・工夫・制度活用の実態
・スタートアップが直面する壁や課題、現場からの率直な声
・研究者・企業・行政に共通する「成功要因」や「制度上のボトルネック」の把握
▶︎ 受賞理由/株式会社CROSS SYNC
株式会社CROSS SYNCは、横浜市立大学発の認定ベンチャーであり、重症患者の遠隔モニタリングを可能にする医療アプリケーションを開発しています。生体データと画像解析を活用した独自の遠隔ICUは、医療現場の人手不足緩和に資する革新性と実用性を備えています。保険収載も実現し、今後他社との連携を通じた社会実装と拡大が進む可能性について高く評価されました。
活発な議論が交わされたパネルディスカッション
本イベントの共催者、LINK-J常務理事・増山明彦さん司会のもと、スタートアップ賞・スタートアップ奨励賞を受賞した4社の代表者が登壇。日本医療研究開発大賞の受賞対象は医療機器関連に限らず、医療分野の研究開発(医薬品、医療機器、再生医療、次世代医療技術など)が含まれるものの、今回の登壇者は全社が「医療機器関連」での受賞でした。
(参加者)
・「世界初 異物反応を抑制する膝下動脈用BioStealth™ステント:日米承認開発と治験」
Global Vascular株式会社(登壇者:取締役 長谷部 光泉 氏)
・「聴診DXの社会実装 ―デジタルバイオマーカーによる循環器医療の未来」
AMI株式会社(登壇者:代表取締役CEO 小川 晋平 氏)
・「世界の失明を50%減らすとりくみ」
株式会社OUI(登壇者:代表取締役 清水 映輔 氏)
・「遠隔ICUから始める医療 “ICU Anywhere”の実現」
株式会社CROSS SYNC(登壇者:取締役 会長 髙木 俊介 氏)

パネルディスカッションでのテーマは多岐にわたりながらも、①他社とのコラボレーション ②グローバル展開 ③エコシステムの展開と、大きく3つの視点でディスカッションされました。
グローバル展開について尋ねられた際、CROSS SYNC・髙木氏は「昨年、経済産業省のグローバルサウス事業の一環で、ベトナムとフィリピンに実装事業として導入を行いました。ただ、その後のビジネス展開まで進めるには、まだ当社の体制やリソースが十分ではないのが現状です。海外で遠隔ICUのニーズがあること自体は確認できた一方で、現地対応などの課題もあり、今後の展開に向けては引き続き準備を進めていく必要があると考えています」と述べました。
スタートアップ経験者として、次世代へ向けたメッセージ


パネルディスカッションの最後に、スタートアップに関わる立場として、これからの世代へのメッセージが求められました。CROSS SYNC・髙木氏は「大学病院の医師として勤務しながら、大学ベンチャーとしてCROSS SYNCを立ち上げました。2018年頃から会社設立の準備を進めていましたが、当時は大学側の体制もまだ十分に整っていない状況でした。私は集中治療部長であり教員という立場でもあったため、利益相反の観点から現在は会長という立場に就いています。当時は大学発スタートアップがまだ3社目という状況でしたが、現在では17社まで増え、徐々に取り組みやすい環境になってきたのではないかと感じています。フルタイムの集中治療部スタッフであった私は夜勤の前後や土日祝日を使って会社の業務を進めていました。最近では、こうした取り組みを教員のインセンティブとして評価する一部の大学も出てきており、以前よりもチャレンジしやすい環境が整いつつあります。ぜひ皆さんにも、積極的に挑戦していただければと思います」と述べました。
