遠隔ICUの現場を知る 横浜市立大学附属病院遠隔ICU支援センター病院見学レポート
【第1回】むつ総合病院・弘前大学病院 来訪編(訪問日:2026年2月10日)
第1回目は、横浜市立大学附属病院の集中治療部が運用する遠隔ICU支援センターを、むつ総合病院と弘前大学病院の医師らが訪れ、支援センターの設備や運用実態、導入アプリケーションの実装状況、現場スタッフとのやり取りを通じて得られた知見をまとめました。見学は単なる設備見学にとどまらず、実際の運用で生じる心理的・組織的な課題や教育的な効果まで議論が及びました。
たくさんのモニターが並ぶ、「支援センター」
横浜市立大学附属病院 集中治療部は1968年の設立以来、長年にわたり集中治療の中核を担ってきた組織であり、2020年度から遠隔診療(遠隔ICU)を用いた集中治療支援を本格的に開始しています。今回の見学は、2025年1月から同地域で導入が始まった生体看視アプリケーションiBSEN DXを用いた遠隔ICU運用に先立ち、実運用の現場を学び、導入準備や運用設計の参考にすることを目的として行われました。参加者は被支援側となるむつ総合病院と弘前大学病院の医師・看護師らで、横浜市大側からは遠隔ICUの運用を担うチームと、システム提供企業であるCROSS SYNCのメンバーが同行した。
専門医不足の地域を救うテクノロジー
むつ総合病院と弘前大学病院の両院は2025年1月から、遠隔ICUをシステム面から支える株式会社CROSS SYNCが提供する生体看視アプリケーション「iBSEN DX(イプセンディーエックス)」の導入を開始しています。医師少数県である青森県では、むつ・下北地域では専門医が特に不足しており、弘前大学病院の専門医等が支援することで、地域の医療の質の向上を目指す体制づくりが進められています。
横浜市立大学附属病院の遠隔ICU・支援センターを見学した際には、支援センター内に並ぶ多数のモニターに被支援施設ごとの生体情報やベッドサイド映像が同時に表示される様子が印象的だったそうである。むつ総合病院と弘前大学病院の先生方からへ質問は支援センターと被支援施設間でのコミュニケーションや情報共有のこと、電子カルテの扱いや、プロトコル・マニュアルの話題まで多岐に渡りました。電子カルテ連携やログ保存により事後レビューや教育利用が可能になる一方、安定運用にはネットワーク冗長化、厳格なアクセス制御、ログ管理などのデータセキュリティ対策と、電子カルテ連携の標準化や初期設定にかかる人的リソースが不可欠です。技術導入は、専門医不在地域でも高度な集中治療判断や若手医師の教育支援、緊急時の意思決定支援や転院抑制を通じた地域医療の安全性向上に寄与すると期待されますが、運用定着にはコミュニケーション方法やプロトコル整備、心理的配慮といった人的側面の整備も重要であることが改めて確認されました。

ランチミーティング
CROSS SYNCのオフィスがあるビルへ場所を変え、ランチミーティングを行いました。時折談笑を交えながら、質疑応答が続き、むつ総合病院と弘前大学病院での遠隔ICUの本格的な運用に向け、施設側や看護師に必要な条件面など、より踏み込んだ質問が相次ぎました。内髙木氏の応答からも、髙木氏率いるチーム内でも遠隔ICUの運用が定着するまでに試行錯誤があったことが伺えました。
特に話題になったのは、遠隔ICUの円滑な運用に欠かせない、支援先の主治医や看護師が支援センターに気軽にコールできる関係づくりの重要性です。髙木氏は過去の経験を交え、主治医本音として「支援センター側からダメ出しをされたくない」、「会話を聞かれたくない」という心抵抗感が垣間見えることもあったと言います。回数を重ねてくると、主治医とのやりとりに限らず、「このラインを超えると嫌がりそう」……というのはわかってくるようになりますよとも髙木氏は付け加えます。オンライン上であっても、要になるのは人と人との信頼とコミュニケーションだという点が協調されました。
見学に参加した医師からは、「過疎化が進んでいる地域では、若い医師へのバックアップとして教育面でもメリットがありますね」などの声も上がり、遠隔ICUへの期待が改めて示されました。
