遠隔ICUの現場を知る【第2回】

見学会

【第2回】広島大学病院AECCC (広島大学病院高度救命救急センター )・ 遠隔ICU搭載 ECMOカー 見学レポート
重症患者を救うために、病院はどこまで進化できるのか。広島大学病院では、ドクターヘリやエクモカー、遠隔ICUを組み合わせた広域医療体制の構築を進めています。中国・四国地方有数の重症病床を有する同院は、高度救命救急センター(ICU・ECU)とHCUを備える高度救急医療の中核拠点です。2013年にはドクターヘリ、2026年4月にはECMO患者を搬送する専用車両「エクモカー」を導入。さらに、車内には遠隔ICU機能を搭載し、搬送中も専門医と連携した治療管理を可能に。今回は、同院の見学レポートをお届けします。

救命医療の未来を切り拓く、二人の牽引者

救急医学・集中治療医学を専門とする志馬伸朗教授は、「EVOLUTION」を掲げ、高度救命救急センター(AECCC)を中心とした新たな救命医療体制の構築を牽引。一方、大下慎一郎准教授は、国内外で重症呼吸不全治療を研鑽し、英国でECMOを活用した治療体制や広域連携の在り方を修得。帰国直後に直面したCOVID-19では、ECMOnetの活動にも携わり、専門医療と地域をつなぐ救命インフラの整備に尽力しています。尽力しています。両氏が率いる取り組みの一つが、ECMOカーや遠隔ICUを活用した、重症患者を救う新たな医療体制です。

遠隔ICUエクモカーで命をつなぐ搬送医療

「エクモカー」の導入台数は全国でも十数台にとどまり、決して多くはありません。AECCC(Advanced Emergency Critical Care Center=広島大学病院高度救命救急センター)の車両は、ボディに描かれたキャッチーなイラストが印象的です。イラストは、県民に親しみや安心感を与える存在としても機能しています。
同院の車両には、ECMOや人工呼吸器を装着した重症患者を安全に搬送するための設備に加え、遠隔医療機能も搭載されています。まさに“走る集中治療室”ともいえる、国内でも先進的な取り組みです。
一般的な救急車では、重症呼吸不全患者の長距離搬送には限界があり、高濃度酸素やECMOによる管理が必要な患者を安全に搬送できる時間は、おおむね30分程度とされています。エクモカーはこうした制約を補い、重症患者を専門施設へ迅速に搬送することで、適切な治療につなげる役割を担っています。
「コロナ禍での3〜4年間の経験から、重症患者さんを一つの施設に集約して治療したほうが生存率が高いことが明確になりました。以前からその可能性は指摘されていましたが、実際の経験によって裏付けられたことで、広島県内の救命救急センターの先生方にもご理解いただき、重症の呼吸不全患者を紹介してくださるようになりました」と大下医師は話します。

遠隔ICU搭載エクモカー、その車内へ

車内は一般の救急車の約1.5倍の広さを確保。小手術にも対応できるスペースを備えるほか、遠隔ICU用のモニター(写真・手前右)を設置し、院内のテレルームと連動した遠隔医療システムを構築しています。さらに、エキスパートの医師、看護師、臨床工学技士の3人に加え、見習いスタッフが1〜2人同乗できるよう座席数にも余裕を持たせ、将来の運用拡大や人材育成を見据えた設計となっています。
実際の出動時も、チームは無駄のない連携を徹底しています。エクモカーより先に医師1人が現地へ向かい、車両の到着と同時に治療を始められる体制です。こうした運用は、一刻を争う現場での試行錯誤を積み重ねる中で確立されました。

遠隔ICUとエクモカーで広がる新たな医療モデル

全国に先駆けて遠隔ICUやエクモカーの運用を進める広島大学病院。最新技術や医療インフラはもちろん、それを生かす人材と挑戦する姿勢が、この取り組みの原動力となっています。志馬医師と大下医師を中心とした「EVOLUTION」の挑戦は、重症患者の救命だけでなく、これからの地域医療の在り方にも新たな可能性を示してくれるはずです。

広島大学病院 救急集中治療科(高度救命救急センター・集中治療部)
教授/副病院長/前医学部長
志馬伸朗(しめ・のぶあき)
救急医学や集中治療医学を専門とし、2015年より広島大学大学院 救急集中治療医学の教授に就任。広島県のみならず、日本全体の救急・集中治療領域における医学研究や医療の向上のためにさまざまな活動に従事するとともに、救急・集中治療科医を目指す若手医師の増加を目標に尽力している。

広島大学病院 救急集中治療科(高度救命救急センター・集中治療部)
准教授
大下慎一郎(おおしも・しんいちろう)
呼吸器内科を専門に研鑽を積み、間質性肺炎や呼吸不全の診療・研究に従事。その後、救急・集中治療領域へと活動の場を広げ、ECMO(体外式膜型人工肺)を活用した重症呼吸不全治療の第一線で活躍している。国内外の先進施設で知見を深め、COVID-19パンデミックでは重症患者の搬送・治療体制構築にも携わった。現在は広島大学大学院救急集中治療医学准教授として、臨床・研究・人材育成に取り組む。

 

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